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第17回 「他の人のためにお金を使う」ことを考えてみよう

 寄付文化の水準が世界的に低いといわれている日本で、最近、驚きのニュースが流れました。国立科学博物館がコレクションの収集・保管のための資金不足をクラウドファンディングで集めようとしたところ、目標額の1億円は開始初日で達成、11月の終了時には、金額で約9億2000万円、支援者数は約5.7万人という結果が公表されました。これは国内クラウドファンディングにおいて、金額も支援者数も過去最高だったそうです。クラウドファンディングというシステムが登場したことによって、寄付方法の選択肢が広がり、今までしてみたいと思っても中々機会がなかった人たちが、気軽に寄付しやすくなったと言えるかも知れません。


 私どもの団体が小学校において金銭教育の授業を行う際に「お金を使う」とは具体的にどういうことなのかを明示することにしています。まずは「生活に必要なモノやサービスを買う」、次に「自分が欲しいモノやサービスを買う」そして、もう一つ、「他の人のためにお金を使う」です。小学生でも「赤い羽根募金」や「ユニセフ募金」などの募金を経験している子どもは多いので、募金や寄付について理解するのはさほどむずかしいことではありません。募金の他にも誰かのためにプレゼントやおみやげを買ったりする行為も、この例としてあげています。つまり、お金は自分のためだけでなく「他の人のため」にも使えるものだということを伝えたいと考えています。


 ただし、小学生の場合、注意すべき点もあります。それは、子ども同士での「おごり・おごられ」「お金の貸し借り」です。友だちのためにお金を使うのだから、良いことをやっていると考えてしまいがちですが、こども同士の場合、トラブルの元になるので、未成年のうちは避けるべきとしっかり教えるべきでしょう。


 世界でも寄付が盛んなアメリカでは、「spirit of giving」という精神が広く行き渡っているほか、寄付をすると税金の優遇制度が受けられることが寄付のさかんな理由としてあげられています。日本でも国や自治体などが認めている団体に寄付をすると「寄付控除」という減税効果のある制度を受けることができます。2008年に始まった「ふるさと納税」もこの「寄付控除」が受けられ、さらに自治体によっては「返礼品」の用意もあるので、「お得な制度」として人気が高まっています。最近はこの「見返り」である「返礼品」に注目が集まりがちですが、自然災害の被災地に対して「ふるさと納税」を行う人もいますので、このようなケースでは「見返り」目的というより、善意の寄付行為に近いものと言えるかもしれません。


 「寄付行為」は社会貢献であり、寄付がさかんな国では、子どもの幼少期から寄付が社会に及ぼす影響などを教えているといわれています。「寄付行為」については寄付するための判断力も必要であり、日本でも子どもに対して、社会貢献としての「寄付行為」について教える機会がもっとあってもよいと思われます。


 

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