2020年の小学校の家庭科の教科書に「契約」ということばが初めて登場しました。「契約」とは、「法律上の責任を伴う約束」です。小学生で「契約」について学ぶの?と驚かれる大人もいるかもしれません。買物の仕組みとして「買う人は買う意思を表し、売る人は売る意思を表して、おたがいの意思が合ったとき(合意)に売買契約がなりたつ」という説明がされています。実は、私たちが普段何気なく行っている買物という行為は「契約」の一つなのです。
契約はいったん成立すると、一方的に契約をやめることはできません。買った品物が不良品であれば、売った側に返品・交換に応じる義務がありますが、買った人の気が変わったなど買った人の理由で品物を返すことはできず、売った人が返品に応じてくれることもありますが、これは売った側の厚意にすぎないのです。通信販売やネットショッピングで「返品ルール」が明確に表示されている場合は、注意を払う人も多いと思われますが、通常の買物でも「契約」行為として、安易に返品等はできないと肝に銘じておくことは大事なことです。
小学校高学年で、「契約」を学習するようになった背景には、2022年、成人年齢の20歳から18歳への引き下げがあります。成人となると、携帯電話の契約や、金融機関の口座の開設、クレジットカードの作成など、種々の契約行為を親の同意なくできるようになります。一方で、今まで未成年ということで、親などの法定代理人の同意がない契約を取り消せる「未成年者取消権」が行使できなくなり、保護の対象からはずされることになります。
小学生では、契約の例として「買物」だけを取り上げていますが、「契約」というものについて、早いうちから意識させることは成人への準備として重要な課題ともいえるでしょう。私たちの身近な生活場面においても、「電車に乗る」「物を借りる」「携帯電話」など契約行為にあたるものはたくさんあります。最近は「携帯電話」を使用している小学生も増えているようですから、これからは、「携帯電話」を使わせる前に、子どもが携帯電話を使えるのは親が契約しているから、それも18歳になれば子ども自身が契約者になれることなど教えておくとよいと思います。
「クーリング・オフ」など、契約の解除については中学校以降習うようですが、契約に関するトラブルで消費者相談センターに寄せられる相談数は、現在でも18歳~20歳前半で少なくありません。成人として責任を持たされるという自覚は大事ですが、何か困ったことがあったら一人で悩まず、保護者や先生にまず相談をするように、教えておくことも親として大事な役目でしょう。
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